氣象報告常常不準

台湾生活。華語・台湾語学習。システム関連の話題など。

二重国籍批判で無視された「台湾籍の事情」

 1972年の日中国交回復に伴う日台断交以降、台湾居住の日台カップルの日本人配偶者、特に「日本人妻」のケースなどで「台湾に帰化したい」と希望する人が少なからずいたわけですが、手続の方法がありませんでした。

 台湾の国籍法は、帰化の要件として『元の外国籍の離脱』を要求しています。この点では日本の国籍法と変わりません。今でも、決して二重国籍を積極的に認めているわけではありません。

台湾国籍法(現行法)
第九條 外國人依第三條至第七條申請歸化者,應提出喪失其原有國籍之證明。但能提出因非可歸責當事人事由,致無法取得該證明並經外交機關查證屬實者,不在此限

・「外国人で帰化申請する人は、元の国籍の喪失証明を提出してください。」
・「但し、本人の責めに帰すべからざる事由でその証明が取れないことを外交機関が確認すれば、この限りではありません。」
というものです。

 2000年以前はこの条文は前半部分
 「外国人で帰化申請する人は、元の国籍の喪失証明を提出してください。」だけでした。

(2023年2月7日補足:2000年以前は帰化時に、元の国籍の喪失証明は要求されていましたが条文上にはなかったようです。参考 立法院法律系統 )

 日本は、台湾を国とあつかわないため、「台湾籍を取得するため」という理由では日本政府は、日本国籍の喪失証明を発行しません。
ですから「日本人妻」のようなケースでは元の国籍(日本国籍)の喪失証明を台湾政府に提出できず、台湾への帰化手続きができなかったわけです。

 その後「日本人妻」の要望に対応したのは台湾です。2000年の台湾国籍法改正では条文の後半部分
 「但し、本人の責めに帰すべからざる事由でその証明が取れないことを外交機関が確認すれば、この限りではありません。」
が追加されました。
 これで例えば、台湾籍を取りたい台湾在住の「日本人妻」の要望をかなえられるようになりました。その後は、帰化する人の手続きは次のような流れです。

 ・日本の役所に「台湾籍を取るので日本国籍の喪失証明を出すよう」申請する。
 ・日本の役所は、申請を受理しない(喪失証明を出さない)が、その際に「不受理証明書」を発行する。
 ・台湾側に、この「不受理証明書」を提出すると、「本人の責めに帰すべからざる事由」ということが認定され、日本国籍を喪失していなくても台湾籍を取得できる。
 ・日本は台湾籍を国籍法上の「外国の国籍」とは見做さず、台湾籍取得によっては、国籍法11条「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」を適用しない。よって日本国籍も維持される。

 ちょっと変な気もしますが、これが「お約束」です。結果的に、台湾に帰化した日本人は「日台重籍」状態になります。

 これは、台湾法に立てばたしかに「二重国籍」です。ただ、「元の国籍が離脱できないのでやむを得ない」というものです。
 一方、日本法に立てば「日本籍のみ」です。台湾籍は国籍法上の「外国の国籍」とは見做されないので、問題ないという扱いです。

 こうした「日台重籍」にかかわる「背景事情」「お約束」は、一般には理解されにくいと思いますが、現にこれまで運用されてきたわけですから、日本の国籍法上で日台重籍者に対して、「二重国籍」だと問題視するのは、いわば不意討ちであり、いまさらそれはないと感じます。

・金田前法務大臣などは、この辺の背景事情を本当に十分理解したうえで記者会見していたのかな?と疑問に思います。おそらくわかってなかったんではないかと。

・一方、八幡和郎氏は、こうした背景事情まで明らかに全部わかった上で、二重国籍攻撃をやっている。そこが極めて残念だなと思うわけです。

参考)居留問題を考える会
https://sites.google.com/site/kyorumondai/home/kika

免税店「例外の例外」

 台湾に住んで4年以上になるが、たまに用事で日本に行くこともある。楽しみの一つは買い物。しかし、折角だからと『免税店』でたくさん買い物したあげく、精算時に免税手続きを拒否されてがっかりさせられることが時々ある。
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 法律上免税になるのは「(日本の)非居住者」のみ。「居住者」は免税措置は受けられない。

・外国人は「原則、非居住者扱い」だが、日本に勤務する場合など一部例外ケースは居住者扱いで免税にならない。

・日本人は「原則、居住者扱い」だが、海外勤務者や、海外居住2年以上の者などは非居住者扱いで免税になる。

国のルールを解説している観光庁のサイトはこちら。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/tax-free/about.html

 さて、私の場合「外国人」であるし、(今は)日本で勤務していないし、(今は)住民票も抜いているし、台湾居住かれこれ4年だもの、絶対免税だよね、と思っていると、冒頭にあるように「拒否」される。

 拒否の理由はパスポートの入国時スタンプが「再入国」であることだという。私は5年間マルチ再入国許可を取って台湾に来ているので、今のところまだ日本の居留資格が切れておらず、日本に行くと、「再入国」のスタンプが押される。これで店頭では、「ダメ」という判断になる。

>「※日本入国時の旅券にある上陸許可の証印が「再入国」でないもの。」
http://www.departinfo.com/pc/images/pdf/tax_refund_english.pdf

 ただこれは、国のルールではない。「日本百貨店協会」が、『店頭での判断を簡単にするために』勝手に決めたもの。観光庁のサイトには書かれていない業界ルールである。

 こんな業界ルールはおかしいのでは?私のケースでも免税扱いになるべきでは?と2015年2月、横浜の関東運輸局国際観光課に相談に行った。

担当のAさん、親身になって対応してくださり、国税庁に問い合わせの上メールをくださった

先ほどご来庁頂きお問い合わせを承りました、関東運輸局国際観光課のAと申します。

外国籍の方で「再入国の証印が押されている場合」の取扱いにつきまして、国税庁に確認したところ、

一概に再入国の証印が押されている方を免税対象から除外するものではない、という回答を得ました。

基本的には、下記国税庁ホームページ記載のとおり、入国及び出国の証印日付を確認しながら、
非居住者に該当するか否かを判断するとのことです。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/menzei/pdf/05.pdf
〈直接PDFに飛びます。上記Q&Aの「問3」をご参照下さい〉

さらには電話も下さり、「店の人が納得しないなら、代わって私から説明しますからご遠慮なく電話してください」との『神対応!』

これで今後はもう大丈夫と思っていたのですが2016年1月の訪日時に、また免税拒否されて、Aさんにヘルプを求めたところ・・

お世話になっております。関東運輸局観光企画課のBと申します。

A宛に送付いただきました免税手続きのご質問ですが、7月より担当課が変更となりましたので、私(B)よりお返事させていただきます。

「消費税免税制度」を扱う消費税法については、所管が国税庁となっております。そのため、免税の可否を判断するのも国税庁の窓口となる税務署の判断ということになっております。

私どもも国税庁の作成するQ&Aを参照して回答しておりますが、そこに記載のないような質問になりますと、直接税務署にお問い合わせいただいております。

今回いただきました、「再入国によって『居住者』か『非居住者』のどちらにあたるか」の質問につきましても、私どもで判断ができませんので、直接税務署にお問い合わせいただきたくお願いいたします。

大変お手数ですが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。 

 これで元の木阿弥です。結局このときは国税庁にかけあう時間もなく、免税措置を受けられませんでした。引継ぎしておいてほしかったなぁ。

 つい先日、私と同じ立場の知人がやはり同じ目にあって「8パーセント(消費税分)損した」とガッカリしていた。折角のたまの日本旅行。このガッカリはなくしたいものです。

(補足)
・「法律上のの原則」はAさんが教えてくれたように
『入国及び出国の証印日付を確認しながら、非居住者に該当するか否かを判断する』というもの。
・ただ、小売店店舗の店員に、実質そこまでの判断はできないとして、「日本百貨店協会」は独自業界ルールで、法律上は免税を受けられるはずの私のような立場まで、一律に免税拒否にしているのが現状。
・これを「違法な差別」だと百貨店協会を糾弾しても、現場としては対応しきれないだろう。
・現実的には国税庁ないし観光庁が判断して「免税になるお墨付き」のような書類をあらかじめ発行してくれるべきだと思います。 

 

蓮舫氏への攻撃で恥をかかされているのは『国』だ

 蓮舫氏が民進党代表を辞任した。八幡和郎氏をはじめとする「二重国籍」攻撃を仕掛けていた側は得意満面のご様子。

 しかし一連の攻撃では、蓮舫氏個人が受けた傷よりも、「法治国家としての日本」が受けた傷の方が、はるかに大きいのではないかと感じる。

 「政治家」の「道義的責任についての追及」や「不誠実さの批判」は、有権者がどんどんやれば良い。「台湾籍を抜かずに日本国の政治家をしていたこと」が道義上けしからんと思うなら、追及すればよい。「知らなかった」という説明が不誠実と思うなら、その点を批判したらよい。そこまでは筆者も全く異論はない。

 但し、そのことと、八幡和郎氏らが主張してきた日台重籍者に対する「国籍法違反」という批判は話が別だ。「法違反」との語を使った時点で対象が公職者に限った話ではなくなるし、制度全体が問われる話になる。

 「選択義務」というが、そもそも台湾籍を選んで日本籍を離脱する選択は許可されない。このことは八幡氏が著書「蓮舫『二重国籍』のデタラメ」(2017年1月9日第一刷)で

p227
 ところが、日台二重国籍の人が台湾籍を選び日本国籍を離脱しようとするのは認めていないのである。その理由は、国籍法の条文が、「外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる(第十三条)」となっているように、「外国の国籍を有する」という条件のもと、台湾(中華民国)は日本が承認している国家ではないため、それが証明書を出すところの「国籍」は「外国の国籍」にあたらないからだという。

とある通りだ。

 この『特殊事情』を承知していれば、一般に、日台重籍者に国籍選択を迫ることがいかに不合理で、人をバカにした話か分かりそうなものだ。

 「選択」と言うからには選択肢と手続が『複数』示されるべきだろう。
 そしてそれぞれ選んだ場合に、どのような結果につながるか、十分説明されたうえで、当人の自由意志でいずれか一つを選ぶ、そうあるべきではないか? 事は「国籍」に関わることである。選択肢の案内もされずに「義務だ、選べ」と言われて、通常は選べるものではない。

 日台重籍者について公式には案内されていない「選択肢」を、整理すると次のようになる。台湾籍を選ぼう(日本籍を離脱しよう)とすると、台湾籍は「外国の国籍」にあたらないから日本籍の離脱はダメだと言われる(上記八幡氏著作引用部)。かといって放置していれば選択義務を果たしていないことになるそうだ。(添付図参照)
 これは制度として、全く破綻しており、日台重籍者に選択義務違反を問うのは無理な話だ。筆者は幾度かフェイスブックの八幡和郎氏のタイムラインにて、このことを指摘したが「そこは論点ではない」『蓮舫のケースには関係ない』などとして、当方の指摘は、ことごとく八幡氏に「削除」された。
 しかし、「法違反」という論点を出してきたのは八幡氏である。その論点ではそもそも『蓮舫のケースに限った話ではない』のである。

 2016年10月18日、当時の金田法務大臣の会見では日台重籍者が法律の定める期限までに日本国籍を選択しないと国籍法上の義務違反になると説明し、「法違反」を主張する攻撃者にお墨付きを与えることになった。
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00823.html

 国として、矛盾する選択義務を日台重籍者に強要することになる。これは法治国家日本の「恥」になるのではないかと懸念する。

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日本籍の有無で(中国籍←→無国籍)と扱いが変わる台湾籍

 台湾籍の扱いの謎が解けたかも? もう30年以上前のことですが、急に鮮明に思い出したことがあります。

 私自身の話ですが、一人で法律の手続きができる年齢になったら、場合によっては日本への帰化を考えるかもしれないと、二十歳になる直前、法務局に相談に行ったことがありました。どういう書類をそろえる必要があるのか。帰化後の戸籍の記載はどのようになるのか・・。
 係の方の説明の要点は
・「台湾の国籍離脱証明」を提出する必要がある。
・帰化前の外国人登録証の国籍欄は「中国」となっているが、帰化後に作られる日本の戸籍には、元の国籍は「無国籍」と記載される。
 とのことでした。(注:今現在も同様なのかどうかは、情報を持っておりません。ご存知の方はぜひ教えてください)

 当時、私は「「中国」という記載もアレだけど、いくらなんでも「無国籍」は無いんじゃないか?」と食い下がったのですが、「台湾籍の離脱証明を出して日本に帰化した場合はそうすることになっている」との説明でした。「元無国籍」などと記載されるのには抵抗感があり、結局手続きはしませんでした。
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 今にして思うと、これは
「日本籍を持っていない人の台湾籍は『中国籍』として扱う」しかし
「日本籍を持っている人の(現在および過去の)台湾籍は『無国籍』として扱う」
 ということだったと解釈できそうです。

 もしこの解釈が正しいならば、これまで私が書いてきたいろいろな矛盾も氷解します。
・金美齢さんが日本への帰化手続きをしたときに、「法務局から先に台湾国籍を喪失して喪失証明書を持ってきてくださいと求められた」としている説明と、
・蓮舫さんが提出した台湾の「喪失国籍許可証書」が不受理になったこと。

(両者は台湾側から見れば全く同じ証明書のはずです。)

この矛盾の説明もつきます。

 ただ、実際のところは法務省の説明を聞くしかないわけです。是非とも、早急に法務省からこの辺の説明があってしかるべきでしょう。

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補足)

・金さんが帰化手続きをしているときは、金さんはまだ日本籍を持っていないので、「中国籍」(と見做された台湾籍)の喪失証明書を出さねばならない。
・蓮舫さんが台湾籍の喪失証明書を出した際には、蓮舫さんは既に日本籍を持っているので(彼女の持つ台湾籍は)「無国籍」扱いであり、その喪失証明書は受け取れない。
・蓮舫さんが、どうしても国籍選択手続きをさせろというので、法務省は彼女に「中国籍を持っている」と(証明は求めずに)自己申告させたうえで、選択宣言をさせた。

・・・という推測です。

「帰化」と書いたら「虚偽事項公表」か?

 蓮舫さんの件、選挙公報に「1985年、台湾籍から帰化」と書いたことを、公選法235条の「虚偽事項の公表罪」と信じて疑わない方が多いようだ。

 これについては「あの」八幡和郎氏ですら、こう書いている。

八幡和郎「蓮舫『二重国籍』のデタラメ」p28~29
 ところで、しばしば「帰化」と言われるが、蓮舫の場合は厳密な法律用語では「国籍取得」である。(中略)
 ただし、普通には、外国籍の人が日本籍になることを広く捉えて「帰化」という。蓮舫もそのように使っていた。(中略)蓮舫の場合は間違いなく17歳まで台湾人で、それが日本人になったら、やはり「帰化」という言葉を使うのは不都合ではない。

  これ以上何をかいわんやである。

蓮舫さんは一つ嘘をついた

 蓮舫氏は会見で「手続きを怠っていたことは事実」と反省の弁を述べました。攻撃側の作った「国籍法違反」という虚構を受け入れた形です。
 おそらく「台湾の特殊性」などと説明しだせば、「また言い訳!」と炎上することになるのを危惧したのでしょうけれど、これは、一般の日台重籍者の立場を「手続きを怠っている人たち」として、切り捨てることでもあります。私は蓮舫氏の会見は残念に思いました。世間に説明しやすくするために一つ嘘をついた、と。

 ツイッターなどで私が「国籍選択で日台の場合「台湾籍」は制度上選べない」と書いたところ「それは蓮舫の場合とは関係ない」という指摘を多数受けました。
 しかしどうでしょう。蓮舫さんのことを離れて、一般論として考えてみてください。
・「『台湾籍を選びたい』のに手段がない」ならば「違反ではない」
・「『日本籍を選ぶつもりがある』のに選ばなかった」なら「違反」
などという解釈がまかり通るか?
 もしそうなれば、「心の中」次第で「違反」かどうかが決まることになります。制度としてそのような「心の中」を問う形は、あってはならないと考えます。

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「攻める側」の嘘、蓮舫攻撃のデタラメ

八幡氏のこの記事には唖然とした。こりゃないわ。

日本の国籍法は二重国籍を認めていない。蓮舫氏のように、父母の国籍が違う場合には、いったん合法的な二重国籍になることが可能だが、22歳までにどちらかを「国籍選択」し、日本国籍を選ぶ場合にはもうひとつの国籍から離脱する義務がある。

ここは「蓮舫氏のように」がなければ、台湾以外の一般論としては成立するだろう。が、蓮舫氏の(=日台間の)ケースでは該当しないのは八幡氏もよくご存じのはずだ。「どちらか」は選べない。「台湾」は手続き上選べない。

特に、国籍選択は非常に強い義務で、放置しておくと、日本国籍を剥奪される可能性もあり得る。

日台重籍者のケースでは当人が「台湾籍を選びたい(日本籍を離脱したい)」というケースでさえも、当人意志にかかわらず、日本籍離脱が許可されない。日本国籍を剥奪される可能性がどこから出てくるというのか?


八幡氏は著書「蓮舫『二重国籍』のデタラメ」(2017年1月9日第一刷)で

p227
 ところが、日台二重国籍の人が台湾籍を選び日本国籍を離脱しようとするのは認めていないのである。その理由は、国籍法の条文が、「外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる(第十三条)」となっているように、「外国の国籍を有する」という条件のもと、台湾(中華民国)は日本が承認している国家ではないため、それが証明書を出すところの「国籍」は「外国の国籍」にあたらないからだという。

と、ご自身で書いている。

この辺の記憶をすっかり失った、というのでもなければ、故意に嘘を書いていることになるのではないか?

・「選択」とは、複数のものから、一つ以上を選ぶこと。「選択肢が一つ」しかない状態で「選択」を迫るのを「踏み絵」と言う。