「蓮舫=二重国籍」批判のデタラメ
八幡和郎氏の著書「蓮舫「二重国籍」のデタラメ」(飛鳥新社 2017年1月9日 第一刷)を読んだ。
《二重国籍は日本では違法である》(p57)
《蓮舫は二重国籍を隠していた》(p57)
《従って、違法な二重国籍がしばらく、あるいは現在まで続いている可能性がある》(p70)
巧妙な「二重国籍」批判を読んでいくうちにすっかり「(蓮舫=二重国籍)→違法」との構図が刷り込まれてしまいそうだが、p227からの、日本政府の立場を説明した部分で、それまでの話がひっくり返る内容がさらりと出てくる。
《その理由は、国籍法の条文が、「外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる(第十三条)」となっているように、「外国の国籍を有する」という条件のもと、台湾(中華民国)は日本が承認している国家ではないため、それが証明書を出すところの「国籍」は「外国の国籍」にあたらないからだという。》(p227-228)
驚かされる。日本政府(法務省)の見解は、
・「台湾籍を持っている日本国民」の「台湾籍」は、国籍法上の「外国の国籍」にあたらない
よって
・「台湾籍を持っている日本国民」は、国籍法上の「外国の国籍を有する日本国民」にあたらない
というものなのだ。*1
そもそも著者の八幡和郎氏が「二重国籍=違法」と主張しているのは、
「『外国の国籍を有する日本国民』は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。」
という「国籍法14条」があるからだ。
「22歳をとうに過ぎているのに、しなければならない選択をしていなかったから違法」との理屈だ。しかし当の日本政府(法務省)が、日台重籍者のケースを国籍法上の「外国の国籍を有する日本国民」にはあたらないと説明していることを踏まえれば、違法呼ばわりは無理筋というものだ。
参考文献)「日台共栄」2016年10月号『二重国籍問題が導く日本版・台湾関係法』(亜細亜大学非常勤講師 多田恵先生による解説記事)
http://www.ritouki.jp/wp-content/uploads/2016/10/40-5.pdf
*1:あくまでも「台湾籍を持っている日本国民」が、国籍法上「外国の国籍を有する日本国民」にあたるかどうかだけの解釈であることに注意。日本国籍を持たない台湾人の台湾籍についての解釈を述べたものではない。