「国籍選択」と台湾籍(1)
まず、一般の国籍変更(帰化)の手続きについて考えてみる。
- イ)「とある外国(A国とする)の国籍だけを持っている人」が日本に帰化手続きをする場合、
国籍法5条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
(1項5号)国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
とあるので、手続きの中でA国籍は失われ、重国籍にはならない。一方、
- ロ)一般に「日本国籍だけを持っている人」が、A国国籍を、自分の意志で取得する場合
国籍法11条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。
によって、日本の国籍は自動喪失するから重国籍にはならない。
このように、日本の国籍法上、本人が直接、重国籍になろうとしてなれるケースは条文上はない。重国籍になる場合というのは、
「生まれながら」(国際結婚家庭の子や、生地主義国での出生)
もしくは
「日本人が意図せず外国から付与された」(居住実績、結婚など。条件は相手国の法令による)
などだ。これらは、本人の直接の意思によらず、「たまたまそうなってしまった」というものだ。
ただ、「たまたま」とはいえ、そうした例外状態を長期間認めるのはいかがなものか、という観点から、一定の猶予期間ののち、上記、イ、ロのどちらかの国籍変更手続きに擬制することで、例外的な状態を解消させようというのが国籍選択の趣旨だと考えられる。