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重国籍者の公職就任の議論 (1984年国会法務委員会)

 1984年の国籍法改正では、それまでの父系主義(父が日本国籍なら子は日本国籍を持つ)が、父母両系主義(父もしくは母が日本国籍なら子は日本国籍を持つ)に改められた。
 二重国籍者が公職に就くことを「法律の想定外」などとする論説を目にしたことがあるが、調べてみたところ、実際には当時の国会法務委員会で、既に論じられていた。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/101/1080/10105101080006a.html

※ちなみに筆者は「台湾籍を「外国の国籍」にあたらないとした法務省の説明」 http://liuk.hatenablog.com/entry/2017/05/28/141514

がある以上、日台重籍の場合は、国籍法上の二重国籍とする解釈には疑問が残ると考えている。ここでは一般論として「二重国籍」の語を用いている。

 当時の政府委員の答弁を筆者なりに要約すると
・二重国籍の人が国会議員さらには総理大臣にもなりうることにつき、制限を設けることも考えられ、その場合でもそうした制限が憲法十四条に違反するものではないが、今すぐそうした制限を設ける話でもない。
重国籍者が参政権を行使しても権利の乱用になるとは考えてない。

 つまり、立法段階で想定済みであり、権利の乱用にはあたらないとされていた、と理解した。(「国籍法14条1項違反になるから、あり得ない」などという説明はされていない。)

第101回国会 法務委員会 第6号
昭和五十九年五月十日(木曜日)

(中略)
○飯田忠雄君 今私のお尋ねしたのは、選挙権とか被選挙権を与えるかどうかということなんですよ。それで、これはもう明確にお答えできると思いますが、つまり重国籍者、これは外国の主権に奉仕する義務を有する者でしょう。国籍を持っておる以上はその国の国民ですから、その国の国民は国の主権者です。例えばアメリカの国民はアメリカの主権者でしょう。同時に日本の主権者である。そういう場合に被選挙権を与えるということになりますと、アメリカの国に忠誠義務を尽くすことを要求されておる人が日本の国会議員になる、場合によっては自由民主党に属すれば総理大臣にもなる、こういうことになりましょう。そういう場合に具体的な条件を考えてなんていったようなことで済むかどうか。いかがですか。
○政府委員(関守君) 御指摘の点は確かに大変問題になるところであろうと思いますけれども、この点につきましては、事柄が重大でございますだけに、その判断になります要素というものは、やはり十分に考えて判断しなければいけない問題だというふうに思うわけでございます。私どもは先ほど申しましたように憲法十四条というのは合理的な差別を禁止するものではないと考えておりますので、一概にそういう制限ができないものではないというふうには考えておりますけれども、今すぐ選挙権なり被選挙権の制限についてどうかということはなかなか難しい問題だろうということで、さらに検討させていただきたいというふうに考えるわけでございます。
○飯田忠雄君 私は私の意見をちょっと述べますが、憲法には権利の乱用ということを禁止しておりましょう。これはお認めになりますか。権利の乱用はできない。これは最高裁の判例にもありますね。権利の乱用は認めていないのですよ。
 そこで、主権国家の立場から考えますと、二重国籍で外国の国籍を持っておる人が日本の憲法を盾にとって主権国家に反するような権利を要求するということは権利の乱用ではないか。権利の乱用であれば、憲法上認める必要はないのではないかと私は考えますが、法制局はどうお考えになりますか。
○政府委員(関守君) 重国籍者になるということは各国の国籍法の法制の違い等によりまして生じてくるわけでございまして、それによってそれぞれの国の法制のもとにおいて参政権が得られるということになります場合に、その権利があるということになったからといって主張できないということに必ずしもならないのじゃないか。それが権利の乱用になるというふうには私どもは考えておりません。
(以下略)

 2017年7月19日補足
「読む国会」さんの引用されている法務委員会議事録
(第101回国会 法務委員会 第10号 昭和五十九年八月二日(木曜日))の内容の方がずっと「ど真ん中」で勉強になります。

http://www.yomu-kokkai.com/entry/renho-kaiken
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/101/1080/10108021080010c.html