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日台重籍を揶揄する記事について「スポーツ報知」に抗議文を送りました

「日台重籍者を揶揄するこちらの記事について」

hochi.news


https://hochi.news/articles/20200609-OHT1T50074.html

 蓮舫氏の国籍騒動から間もなく四年です。大仁田厚氏という「有名人」の口を借りて、とはいえ、貴社のような大手のマスコミが、日台重籍の立場を揶揄するような記事をいまだに出し続けることは、台湾関係者の立場からは極めて残念です。

 蓮舫氏は当時、政治家としての判断で問題の「早期収拾」を図るために指摘されていた義務違反を「認めた」形をとったのでしょう。
 しかし、台湾籍の実務上の扱いについては、その後、別の当事者により行われた情報公開請求により、「一律に選択義務対象になるとは言えない」ことを示す情報が、国の機関である総務省の情報公開審査会から出ております。答申書(令和元年度(行情)答申第295号)(令和元年11月12日付)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000654465.pdf

答申書の中ではまず、
◎当事者に対し、従来「日台間の場合、日本側では、日本国籍の単一国籍扱い」と、説明していたことを認めています。(13ページから14ページにかけて)
・・・(後付けで)「『一律に』そう言うと『不正確だった』」としてはいますが、それでも「『一律に』『重国籍扱い』だ」とは言っていません。「電話のみの照会や問合せにより判断を行うことはできない」と言葉を濁しています。

 一方、明確に記述している点を見ると
◎国籍法14条の選択義務対象になる「外国の国籍を有する」の「外国」とは、日本国が「国家として承認している国」の国籍を指す。(13ページ上から4行目)
・・・日本が台湾を「国家として」は承認していないことは、貴社でもご承知だろうかと思います。

◎国籍喪失又は国籍離脱の手続の際に,台湾当局発行の証明書を国籍証明書として届書に添付された場合には,受理することができない(14ページ上から8行目 ウ)ともあります。
・・・選択と言っても、そもそも「台湾籍を選んで日本籍を抜ける」という手続きは認められていないのです。

 ***

 ではなぜ、日本の法務当局はハッキリ「台湾の場合は義務対象ではない」と説明しないのか。

日本と中国の間の「日中共同声明」の3項で
>「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」

としています。当事者にとっては迷惑な話ですが、中国側は、台湾の人民についても「自国民」だという建前をとっており、日本側はそれを「理解・尊重」つまりは「忖度」しているわけです。日台重籍の当事者が「現に有する外国の国籍」欄に、自ら「中国」と記載して日本国籍の選択届を出した場合には、「自分でそう言うなら・・」とばかりにそのまま受け付けられてしまいます。

 それ以外の手続き選択肢は、いずれも「外国当局の証明書類」を必要とするものですが、ここで、「台湾当局発行の証明書類」を添付した届は、受け付けないのは上記の通りです。
 こうした実務での扱いを丁寧に追えば、日台間の国籍選択手続きは決して、「日本」と「台湾」の二つからどちらか一つを選ばせる、というものではないことがわかります。そして「選択義務違反」というような単純化された構図を一概に当て嵌められるものではないことは、公開された文書に基づいて調べていただければお分かりいただけるはずです。

 今後は日台間の重籍問題について当事者の立場に配慮して、記事の在り方を考えていただけますようお願いします。今回のような揶揄の記事が今後無くなりますように。