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国籍法上の国籍選択の規定と日台重籍者

国籍法上の国籍選択の規定

www.moj.go.jp

(国籍の選択)
第十四条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。

2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。

 外国国籍を選択する場合

外国の法例に基づき外国国籍の選択を行う方法

日本と同様の「国籍選択制度」を持つ外国の場合は、その外国の法例に基づいて、その外国国籍を選択し、その後日本側に「国籍喪失届」を提出する方法があります。

日本国籍を離脱する方法

「国籍離脱届」を提出する。

法務省:国籍離脱の届出

f:id:liuk:20180328134111j:plain

この場合には

「現に外国国籍を有することを証明するに足りる書面」

を求められていることに留意してください。

日本国籍を選択する場合

外国国籍の離脱をする方法

外国国籍を離脱しその後日本側に「外国国籍喪失届」を提出する。

選択宣言の手続きをする方法(戸籍法104条の2)

第一〇四条の二 国籍法第十四条第二項の規定による日本の国籍の選択の宣言は、その宣言をしようとする者が、その旨を届け出ることによつて、これをしなければならない。
2 届書には、その者が有する外国の国籍を記載しなければならない。

法務省:国籍選択の届出

f:id:liuk:20180328134250j:plain

いわゆる「国籍選択宣言」は「外国の国籍を離脱することによるほか」の選択肢で

国籍法14条2項後段の

戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。

というもの。

注目すべきは(必要な)添付書類について「ありません」となっていること。

「国籍離脱届」のときのような「現に外国国籍を有することを証明するに足りる書面」の要求をしていません。単に本人の自己申告に任せているわけです。

つまりある人が「日本国籍の選択宣言」を行って戸籍謄本にその旨が記載されたとしても、外国籍の確認をしているわけではない。当人が、国籍法上外国籍を併有する二重国籍者であったことの証明にはならないのです。

 

「日台重籍者」の選択の手続き

台湾籍の選択はできない

参考1

「日本国籍離脱」の手続きであれ、「日本国籍喪失」の手続きであれ、台湾「国籍」への帰化ないし選択のためということであれば、これを行うことが出来ないという取扱いだという。

多田 恵先生の 「二重国籍問題が導く日本版・台湾関係法」より  

www.ritouki.jp

参考2 当方の問い合わせ時の録音から(開始約一分のところ)

私)選択しなければいけないんじゃないかと言って制度を色々調べてみたら、台湾籍の方を選んで日本籍を抜けるというのはできないということのようなんですが?
担当者)そうなんですね。仮に二重国籍の方で日本国籍を抜ける場合は国籍離脱届というのを通常出すんですけれども、そうしても台湾の方の場合だと不受理になってしまいます。

www.youtube.com

日本国籍選択

台湾籍の離脱をする方法は受け付けられない

参)平成28年10月14日(金)法務大臣閣議後記者会見の概要より

>「一般論として,台湾当局発行の国籍喪失許可証が添付された外国国籍喪失届については,戸籍法第106条の外国国籍喪失届としては受理していません。

法務省:法務大臣閣議後記者会見の概要

日本国籍の選択宣言の手続きをする方法

可能です。但し、「現に保有する国籍」欄に「中国」と書いて提出する必要があります。

これは何の冗談か?

 上で見たように日台重籍者は「台湾籍を選択すること(日本国籍を喪失すること)」は日本側の手続き上、できません。選択ではなく一択です。

 その状況で、平成28年10月18日の記者会見で、金田法相は

一般論として,台湾出身の重国籍者については,法律の定める期限までに日本国籍の選択の宣言をし,これは国籍法第14条第1項,従前の外国国籍の離脱に努めなければならない,これは国籍法第16条第1項ということになります。期限後にこれらの義務を履行したとしても,それまでの間は,これらの国籍法上の義務に違反していたことになります。

法務省:法務大臣閣議後記者会見の概要

 と述べています。これがきっかけとなって、現在、多くの日台重籍者が悩んでいます。

「義務ならば果たさなければならないが、もしどうしても選ばなければならないというなら台湾を選びたい」

「しかし選びようがない。なのに選択が義務だといわれる」

こんなバカげた話があるでしょうか。

 私の場合はそこで、法務局に問い合わせをしたのですが、先の録音の通り、

※「日本の方では台湾の事を国として認めているわけではないので、台湾国籍と言うのは日本側の扱いにはそもそもない。(日台重籍者については)日本国籍単一の国籍を持つと言う風に扱われる」」
※「(選択の)手続きをする必要はないし、しなかったからと言って何らかの咎めがあるわけではない」

と説明された次第です。

 いったい、日台重籍者について「国籍選択義務」とはいったい何だったのか? 法務大臣の見解はどういう意図だったのか?このまま放置できるものではありません。

「台湾出身の重国籍者については」という最低の誤誘導(ミスリード)

 2016年10月18日の金田法相の発言はよく読むと、「台湾出身の重国籍者」というきわめて奇妙な言い回しをしている。

 国籍法14条の条文は「外国の国籍を有する日本国民は」です。ここは、日台重籍の当事者に誤解のないように書くならば「台湾の籍を有する日本国民」は、と説明すべきところです。

 金田法相はこれを「台湾出身の重国籍者」と発言することで、通常の「日台重籍」が法上の重国籍にあたるかどうか判断を曖昧にしたまま、選択義務は負うかのように印象付けたことになります。

 私はこのひっかけ表現に気づいたとき、まさに、はらわたが煮えくり返る思いでした。

 台湾出身だろうがなんだろうが法上の「重国籍者」であれば国籍法14条の選択義務を負う。法論理的には金田法相は嘘を言っていることにはならないかもしれません、

 しかし、法務局の電話説明のように日台重籍者が「日本国籍単一の国籍を持つ」として扱われる、つまりそもそも「重国籍者」扱いでないとなればどういうことか。

 野党第一党党首にダメージを負わせようと意図したものかどうかはわかりませんが、結果的には、一般の日台重籍者を巻き込んで、いたずらに不安に陥れ、その弊害が続いている。その責任は重大だと言わざるを得ません。

 一刻も早く、金田法相の選択義務発言は、その妥当性を再検証されるべきでしょう。