氣象報告常常不準

台湾生活。華語・台湾語学習。システム関連の話題など。

「日台重籍」が「国籍法違反」だという八幡和郎氏の「デマ」をいまだに正せない社会を憂慮する

agora-web.jp

>蓮舫氏の二重国籍問題は、法律が良いかどうかは別として、単に法律に反している状態だったというのと・・(略)

  まだ「法律に反して」などと書くのか八幡和郎氏は?と、げんなりした気分だ。
蓮舫氏はすでに台湾籍を離脱したわけだが、その離脱時点までの対応について「『日本の政治家として』いかがなものか?」との疑問を呈することそれ自体については、別に問題だとは思わない。
 しかし、日台重籍者のケースに対して「国籍法違反」との言説を繰り返すことは、悪質なデマであるとともに、一般の日台重籍者への侮辱である。いい加減やめてもらいたいものだ。

 当方は確認のため2017年10月2日、「東京法務局国籍課」に「日台重籍者に国籍法14条の国籍選択義務が発生するのか?」と問い合わせを行った。
 蓮舫騒動から1年、騒動の当初は役所の説明も二転三転したようだが、騒動から十分な時が経っている。法務局内でも台湾籍の取り扱いについて一応の結論を得て落ち着いたものになっているであろう頃だ。録音があるのでやり取りの内容を聞いてほしい。

 

www.youtube.com

 

※「日本の方では、台湾の事を国として認めているわけではないので、台湾国籍というのは日本の方の扱いにはそもそも無い。日本国籍単一の国籍を持つとして扱われる。」

これが東京法務局国籍課による説明である。
 ただ、世間一般に浸透している「国籍法違反」という見方とは明らかに食い違いがあるため、当方も重ねて食い下がった。特に、2016年10月の金田勝年法相(当時)の記者会見との整合性を尋ねた際には、担当の方は一旦、内部で確認を取ったうえで次のように説明した。
※「『台湾の国籍を選ぶ』ということは、台湾でないほかの国であれば『日本に離脱の届け出を出す』ことになるが、台湾の場合だと不受理になる。よってそういった申請を出す必要はないし、出さなかったからと言って何らかの咎めがあるわけではない

 国籍手続きを管轄する法務局国籍課で、ここまではっきりと言質をもらっている。日台重籍者がこれ以上、国籍法に違反しているなどと後ろ指をさされる理由はない。

法務局の説明と、蓮舫氏の行った手続きのケースを考えあわせれば、
・日台重籍者は日本国籍単一の国籍を持つとして扱われる。→(選択手続きの)申請を出す必要はない。
・但し当事者が「自身が『中国籍』を持つ」と主張して、国籍法14条2項後段の国籍選択宣言の手続きを希望するのであればこれを行わせる。

というのが、日台重籍者の扱いの実際のところであろう。

 

 さて八幡氏は、このような扱いを知らなかったのだろうか?

 八幡氏はご自身の著書「蓮舫「二重国籍」のデタラメ」(飛鳥新社 2017年1月9日 第一刷)中の、日本政府の立場の説明で
《その理由は、国籍法の条文が、「外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる(第十三条)」となっているように、「外国の国籍を有する」という条件のもと、台湾(中華民国)は日本が承認している国家ではないため、それが証明書を出すところの「国籍」は「外国の国籍」にあたらないからだという。》(p227-228)
と書いている。
 つまり、日本政府が国籍法の実務上、そもそも台湾の籍を外国籍と扱っていないことを八幡氏自身は承知しているのである。

 それでいてなおも「国籍法違反」という言説を垂れ流しつづけるのは、悪質なデマ以外の何物でもなかろう。これをいまだに正せていない、デマに対して脆弱な社会についても憂慮せざるを得ない。

=======

なお、上記引用部の記載内容はもともとは、多田恵氏の論考中(「二重国籍問題が導く日本版・台湾関係法」(2016年10月18日))の記載に同じだと思われる。

www.ritouki.jp

 それぞれの発行日の点から、多田氏の論考が先行しており、オリジナルであることはあきらかで、八幡和郎氏は多田氏の著作を一部改変して利用しているものと思われる。

このため、多田氏の文献も引用するとともに、比較結果を次に示す。

f:id:liuk:20170807123852j:plain

左:多田恵「二重国籍問題が導く日本版・台湾関係法」(2016年10月18日) http://www.ritouki.jp/index.php/info/20161019/
右:八幡和郎「蓮舫『二重国籍』のデタラメ」p227(2017年1月9日第一刷)
(テキスト比較ツール difff《デュフフ》ver.6.1使用)

 

もし剽窃行為によるものであれば、「評論家としていかがなものか?」と思う。