氣象報告常常不準

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蓮舫氏への攻撃で恥をかかされているのは『国』だ

 蓮舫氏が民進党代表を辞任した。八幡和郎氏をはじめとする「二重国籍」攻撃を仕掛けていた側は得意満面のご様子。

 しかし一連の攻撃では、蓮舫氏個人が受けた傷よりも、「法治国家としての日本」が受けた傷の方が、はるかに大きいのではないかと感じる。

 「政治家」の「道義的責任についての追及」や「不誠実さの批判」は、有権者がどんどんやれば良い。「台湾籍を抜かずに日本国の政治家をしていたこと」が道義上けしからんと思うなら、追及すればよい。「知らなかった」という説明が不誠実と思うなら、その点を批判したらよい。そこまでは筆者も全く異論はない。

 但し、そのことと、八幡和郎氏らが主張してきた日台重籍者に対する「国籍法違反」という批判は話が別だ。「法違反」との語を使った時点で対象が公職者に限った話ではなくなるし、制度全体が問われる話になる。

 「選択義務」というが、そもそも台湾籍を選んで日本籍を離脱する選択は許可されない。このことは八幡氏が著書「蓮舫『二重国籍』のデタラメ」(2017年1月9日第一刷)で

p227
 ところが、日台二重国籍の人が台湾籍を選び日本国籍を離脱しようとするのは認めていないのである。その理由は、国籍法の条文が、「外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる(第十三条)」となっているように、「外国の国籍を有する」という条件のもと、台湾(中華民国)は日本が承認している国家ではないため、それが証明書を出すところの「国籍」は「外国の国籍」にあたらないからだという。

とある通りだ。

 この『特殊事情』を承知していれば、一般に、日台重籍者に国籍選択を迫ることがいかに不合理で、人をバカにした話か分かりそうなものだ。

 「選択」と言うからには選択肢と手続が『複数』示されるべきだろう。
 そしてそれぞれ選んだ場合に、どのような結果につながるか、十分説明されたうえで、当人の自由意志でいずれか一つを選ぶ、そうあるべきではないか? 事は「国籍」に関わることである。選択肢の案内もされずに「義務だ、選べ」と言われて、通常は選べるものではない。

 日台重籍者について公式には案内されていない「選択肢」を、整理すると次のようになる。台湾籍を選ぼう(日本籍を離脱しよう)とすると、台湾籍は「外国の国籍」にあたらないから日本籍の離脱はダメだと言われる(上記八幡氏著作引用部)。かといって放置していれば選択義務を果たしていないことになるそうだ。(添付図参照)
 これは制度として、全く破綻しており、日台重籍者に選択義務違反を問うのは無理な話だ。筆者は幾度かフェイスブックの八幡和郎氏のタイムラインにて、このことを指摘したが「そこは論点ではない」『蓮舫のケースには関係ない』などとして、当方の指摘は、ことごとく八幡氏に「削除」された。
 しかし、「法違反」という論点を出してきたのは八幡氏である。その論点ではそもそも『蓮舫のケースに限った話ではない』のである。

 2016年10月18日、当時の金田法務大臣の会見では日台重籍者が法律の定める期限までに日本国籍を選択しないと国籍法上の義務違反になると説明し、「法違反」を主張する攻撃者にお墨付きを与えることになった。
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00823.html

 国として、矛盾する選択義務を日台重籍者に強要することになる。これは法治国家日本の「恥」になるのではないかと懸念する。

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日本籍の有無で(中国籍←→無国籍)と扱いが変わる台湾籍

 台湾籍の扱いの謎が解けたかも? もう30年以上前のことですが、急に鮮明に思い出したことがあります。

 私自身の話ですが、一人で法律の手続きができる年齢になったら、場合によっては日本への帰化を考えるかもしれないと、二十歳になる直前、法務局に相談に行ったことがありました。どういう書類をそろえる必要があるのか。帰化後の戸籍の記載はどのようになるのか・・。
 係の方の説明の要点は
・「台湾の国籍離脱証明」を提出する必要がある。
・帰化前の外国人登録証の国籍欄は「中国」となっているが、帰化後に作られる日本の戸籍には、元の国籍は「無国籍」と記載される。
 とのことでした。(注:今現在も同様なのかどうかは、情報を持っておりません。ご存知の方はぜひ教えてください)

 当時、私は「「中国」という記載もアレだけど、いくらなんでも「無国籍」は無いんじゃないか?」と食い下がったのですが、「台湾籍の離脱証明を出して日本に帰化した場合はそうすることになっている」との説明でした。「元無国籍」などと記載されるのには抵抗感があり、結局手続きはしませんでした。
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 今にして思うと、これは
「日本籍を持っていない人の台湾籍は『中国籍』として扱う」しかし
「日本籍を持っている人の(現在および過去の)台湾籍は『無国籍』として扱う」
 ということだったと解釈できそうです。

 もしこの解釈が正しいならば、これまで私が書いてきたいろいろな矛盾も氷解します。
・金美齢さんが日本への帰化手続きをしたときに、「法務局から先に台湾国籍を喪失して喪失証明書を持ってきてくださいと求められた」としている説明と、
・蓮舫さんが提出した台湾の「喪失国籍許可証書」が不受理になったこと。

(両者は台湾側から見れば全く同じ証明書のはずです。)

この矛盾の説明もつきます。

 ただ、実際のところは法務省の説明を聞くしかないわけです。是非とも、早急に法務省からこの辺の説明があってしかるべきでしょう。

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補足)

・金さんが帰化手続きをしているときは、金さんはまだ日本籍を持っていないので、「中国籍」(と見做された台湾籍)の喪失証明書を出さねばならない。
・蓮舫さんが台湾籍の喪失証明書を出した際には、蓮舫さんは既に日本籍を持っているので(彼女の持つ台湾籍は)「無国籍」扱いであり、その喪失証明書は受け取れない。
・蓮舫さんが、どうしても国籍選択手続きをさせろというので、法務省は彼女に「中国籍を持っている」と(証明は求めずに)自己申告させたうえで、選択宣言をさせた。

・・・という推測です。

「帰化」と書いたら「虚偽事項公表」か?

 蓮舫さんの件、選挙公報に「1985年、台湾籍から帰化」と書いたことを、公選法235条の「虚偽事項の公表罪」と信じて疑わない方が多いようだ。

 これについては「あの」八幡和郎氏ですら、こう書いている。

八幡和郎「蓮舫『二重国籍』のデタラメ」p28~29
 ところで、しばしば「帰化」と言われるが、蓮舫の場合は厳密な法律用語では「国籍取得」である。(中略)
 ただし、普通には、外国籍の人が日本籍になることを広く捉えて「帰化」という。蓮舫もそのように使っていた。(中略)蓮舫の場合は間違いなく17歳まで台湾人で、それが日本人になったら、やはり「帰化」という言葉を使うのは不都合ではない。

  これ以上何をかいわんやである。

蓮舫さんは一つ嘘をついた

 蓮舫氏は会見で「手続きを怠っていたことは事実」と反省の弁を述べました。攻撃側の作った「国籍法違反」という虚構を受け入れた形です。
 おそらく「台湾の特殊性」などと説明しだせば、「また言い訳!」と炎上することになるのを危惧したのでしょうけれど、これは、一般の日台重籍者の立場を「手続きを怠っている人たち」として、切り捨てることでもあります。私は蓮舫氏の会見は残念に思いました。世間に説明しやすくするために一つ嘘をついた、と。

 ツイッターなどで私が「国籍選択で日台の場合「台湾籍」は制度上選べない」と書いたところ「それは蓮舫の場合とは関係ない」という指摘を多数受けました。
 しかしどうでしょう。蓮舫さんのことを離れて、一般論として考えてみてください。
・「『台湾籍を選びたい』のに手段がない」ならば「違反ではない」
・「『日本籍を選ぶつもりがある』のに選ばなかった」なら「違反」
などという解釈がまかり通るか?
 もしそうなれば、「心の中」次第で「違反」かどうかが決まることになります。制度としてそのような「心の中」を問う形は、あってはならないと考えます。

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「攻める側」の嘘、蓮舫攻撃のデタラメ

八幡氏のこの記事には唖然とした。こりゃないわ。

日本の国籍法は二重国籍を認めていない。蓮舫氏のように、父母の国籍が違う場合には、いったん合法的な二重国籍になることが可能だが、22歳までにどちらかを「国籍選択」し、日本国籍を選ぶ場合にはもうひとつの国籍から離脱する義務がある。

ここは「蓮舫氏のように」がなければ、台湾以外の一般論としては成立するだろう。が、蓮舫氏の(=日台間の)ケースでは該当しないのは八幡氏もよくご存じのはずだ。「どちらか」は選べない。「台湾」は手続き上選べない。

特に、国籍選択は非常に強い義務で、放置しておくと、日本国籍を剥奪される可能性もあり得る。

日台重籍者のケースでは当人が「台湾籍を選びたい(日本籍を離脱したい)」というケースでさえも、当人意志にかかわらず、日本籍離脱が許可されない。日本国籍を剥奪される可能性がどこから出てくるというのか?


八幡氏は著書「蓮舫『二重国籍』のデタラメ」(2017年1月9日第一刷)で

p227
 ところが、日台二重国籍の人が台湾籍を選び日本国籍を離脱しようとするのは認めていないのである。その理由は、国籍法の条文が、「外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる(第十三条)」となっているように、「外国の国籍を有する」という条件のもと、台湾(中華民国)は日本が承認している国家ではないため、それが証明書を出すところの「国籍」は「外国の国籍」にあたらないからだという。

と、ご自身で書いている。

この辺の記憶をすっかり失った、というのでもなければ、故意に嘘を書いていることになるのではないか?

・「選択」とは、複数のものから、一つ以上を選ぶこと。「選択肢が一つ」しかない状態で「選択」を迫るのを「踏み絵」と言う。

 

 

どこ吹く風?

またまた、八幡氏の記事の話になってしまいますが、

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/2a/Dual_Citizenship.svg/853px-Dual_Citizenship.svg.png

トップに出てくるこの地図は「Wikipedia」からの引用で
緑が多重国籍を認める国
赤が多重国籍を認めない国
なのだそうです。

まず、この地図見てみて、多重国籍を認める緑色陣営にとって、逆風来てる感じ、受けますかね?さらこの地図ちょっと検証してみましょう。

 

・スペインが赤ですが・・・
「Wikipediaのパリ市長イダルゴさんに関する記事で

アンヌ・イダルゴ - Wikipedia

「フランス国籍取得時に当時のスペインの法律により自動的にスペイン国籍は喪失したが、成人後にスペインの国籍法が改正されたことに伴い、改めてスペイン国籍を取得しており、現在はフランスとスペインの二重国籍者である。」

スペインは緑とすべきですね。

 

・ドイツが赤ですが・・・
渡辺 富久子氏の記事「【ドイツ】 国籍法の改正」では

「国籍法が改正され、外国人の子で、ドイツで出生したことによりドイツ国籍を有するものが一定の要件を満たす場合には、成人後も二重国籍を保持することができるようになった。」

「外国人の子で、ドイツで出生したことによりドイツ国籍を有 するものが国籍を選択しなくてすむようにするための国籍法改正法案(注 4)が、2014 年 7 月に連邦議会を、9 月に連邦参議院を通過した。改正国籍法は、公布から 1 か月後 に施行される。」 

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8802176_po_02610205.pdf?contentNo=1

ドイツも今は緑ですね。

 

・韓国が赤ですが
藤原 夏人氏の記事「韓国の国籍法改正」では限定的ながら重国籍容認となったことが述べられています。

 「韓国では2010年5月4日、限定的に重国籍を認める改正国籍法が公布された。我が国と同様、韓国の国籍法も重国籍を防ぐために国籍選択制度を導入していたが、今回の改正で、出生時に重国籍となった場合や、配偶者が韓国人である外国人が韓国籍に帰化した場合などに対象者を限定した上で、国内で外国籍を行使しないという誓約を行うことを条件に、外国籍を放棄しなくても韓国籍を保有できるようにしたものである。」

http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/pdf/024506.pdf

韓国も限定的ながら緑側でしょう。

 この三国だけでも緑に塗りなおすと、受ける印象はまた一段と違ってくるのではないでしょうか?

 

「二重国籍に強まる世界的な逆風」というのはどこで吹いているのでしょう?

小野田議員・蓮舫議員比較

 小野田議員に対しては、これまで特に悪い印象をもっていたわけではないが、こういう発信をするということについては、なんだかとても嫌な感じを受けた。

archive.is

注)リンク切れになっていたので2018年4月20日に魚拓にリンクを貼りなおしました。

 

小野田氏とは違う私なりの視点で、蓮舫氏と小野田氏の背景事情を比べてみた。小野田氏を非難するつもりはないが、そんな偉そうなことを言える立場でも無いように思える。折角の自身の体験を、それぞれ異なる他人の立場を思いやる方向で生かしてほしいと思う。
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※日本国籍取得の時期について

・小野田氏・・・(1985年の国籍法改正による取得だと思われるが)未だ自ら、いつ、どのように日本籍を取得したか、公開しているわけではない。(筆者はもともと公開すべき情報とは思っていないが)

・蓮舫氏・・・1985年に「帰化」と公表していたが、「1985年の国籍法改正による国籍取得、が正確なところで「帰化」は虚偽だ」として攻撃された。(用語に不正確な部分があったものの、自ら進んで公開はしていた。)
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※国籍選択手続きの必要性を知りえたかどうか

・小野田氏・・・日米重国籍者の場合は、在米日本大使館のホームページなどで

「日米重籍者のケース、に具体的に落とし込んで」国籍選択の手続き、やるべきことは詳しく案内されている。(一度くらい、見たことありそうなものでは?)

http://www.us.emb-japan.go.jp/j/kokuseki/k_sentaku.html

・蓮舫氏・・・日台重籍者の場合は、日本政府・関連団体(交流協会など)のホームページなどで、「日台重籍者のケースに具体的に落とし込んだ形」での国籍選択手続きは案内されていない。

https://www.koryu.or.jp/taipei/ez3_contents.nsf/05/4ACBB1A21ABC4622492579C8000FE5BA?OpenDocument

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※自分のケースが日本の国籍法上、そもそも重国籍扱いではないと思い込んだ可能性はあるか?

・小野田氏・・・「日米重国籍者」に関し、日本の国籍法上「重国籍にあたらない」というような誤解につながる情報は確認できない。

・蓮舫氏・・・「日台重籍者」のように、仮に自分に台湾籍が残っていたとしても、日本の国籍法上は外国籍扱いではないから問題ない、放っておいてよい、と解釈してしまいそうな情報が、以下のように、少なからずある。

 1)台湾に帰化した日本人の問題
 国籍法11条「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」
とあるにもかかわらず、日本の国籍を失わない扱いであることは広く知られている。よって「台湾籍」は、国籍法上は「外国の国籍」にあたらないと思い込んだ可能性。

 2)初当選当時(2004年)の記事
 2004年 櫻井よしこ先生「理由は中国への気兼ねか? 日台両国の架け橋的人物の日本国政離脱を阻む不可解」

http://www.ritouki.jp/index.php/info/20040918/

  「72年の日中国交正常化で、日本は台湾を国として認めなくなりました。ですから台湾国籍も認めない。で、私の日本国籍離脱を許せば、私は無国籍ということになる。それでは日本国民を守るという日本国としての責任を果たせなくなるのでダメだ、という論法です」

 こうした記事を読んで、それなら、仮に台湾籍があっても、そもそも法上の重国籍にはなりえないと思い込んだ可能性。

 3)2016年問題発覚後の論考
 2016年 多田 恵先生「二重国籍問題が導く日本版・台湾関係法」より

http://www.ritouki.jp/index.php/info/20161019/

 「日本国籍離脱」の手続きであれ、「日本国籍喪失」の手続きであれ、台湾「国籍」への帰化ないし選択のためということであれば、これを行うことが出来ないという取扱いだという。
 その理由は、国籍法の条文が「外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を離脱することができる(13条)」というふうに「外国の国籍を有する」という条件であるところ、台湾(中華民国)は日本が承認している政府ではないため、それが証明書を出すところの「国籍」は「外国の国籍」にあたらないためだという。

 これで「台湾籍は「外国の国籍」にあたらないと法務省が説明したのだ。」と理解し、安心してしまった可能性。

 4)最大の攻撃者の著書
2017年 八幡和郎氏「蓮舫「二重国籍」のデタラメ」より

p227
 ところが、日台二重国籍の人が台湾籍を選び日本国籍を離脱しようとするのは認めていないのである。その理由は、国籍法の条文が、「外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる(第十三条)」となっているように、「外国の国籍を有する」という条件のもと、台湾(中華民国)は日本が承認している国家ではないため、それが証明書を出すところの「国籍」は「外国の国籍」にあたらないからだという。

 攻撃の急先鋒である八幡氏ですら、「台湾籍」が「外国の国籍」にあたらない、という法務省の見解があることを認めざるを得なかった、と理解した可能性。