氣象報告常常不準

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日台重籍者に安心してほしい話

(2017年10月2日に東京法務局国籍相談窓口に私自身で電話して確認しております)

 2016年秋の蓮舫さんの「二重国籍騒動」以来、日本における自身の法的立場を不安に思っている日台重籍者(台湾籍を持つ日本国民)は少なくないだろう。

 元通産官僚の八幡和郎氏が政治家の蓮舫氏に対して二重国籍だ、と指摘し、「国籍法の選択義務を果たしていない」などと攻撃した蓮舫騒動。一般の日台重籍者でも、あの騒動をきっかけに「自分も義務違反扱いされるのでは?」と不安に思った人は少なくないはずだ。

 私も近親に日台重籍者がおり、この件は他人ごとではなかった。日本の国籍法上、この立場の人に本当に選択義務が課されているのだとすれば、対応しなければならない。

 ところが、この「選択」の「手続き」だが、日台重籍者が台湾籍を選択することにして、日本国籍を離脱しようとしても、「できない」とされる。日本は台湾を国として認めていないので、日台重籍者に日本籍を離脱させる と、(日本側から見ると)「無国籍者」になってしまうからだという。(実はこのように扱われることについては以前から台湾関係者の間ではよく知られていたことだ。)
 自身に選択義務が課せられると思って「ならば台湾籍を選ぼう」と決意した日台重籍者には、「台湾は国ではないから選べませんよ」「日本籍を離脱したら(日本から見ると)あなたは無国籍者になってしまいますから離脱できないのですよ」という回答をしてきているのだ。

 

 日本政府自らが台湾をそのように扱ってることを踏まえれば、八幡和郎氏のように、日台重籍者に対して「二重国籍」呼ばわりをしたり、「選択義務を果たせ」だのと迫ることは、そもそも筋の通らない話ではないか? そういう趣旨で質問をしようと、2017年10月2日、法務局の国籍相談窓口

http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/static/kokuseki_soudann.html

に電話で相談してみた。その時のやりとり内容を以下に置いている。

 

liuk.hatenablog.com

 

 私自身もある意味拍子抜けだったのだが、あまりにあっさりと、「日台重籍は、日本側からは、日本国籍単一の国籍を持っているというふうに扱われる」との回答を得た。
 また「台湾の国籍を選ぼうとしても、その手続きである日本籍離脱届は不受理になる。よって、そういった申請を出す必要はない。また、出さなかったからと言って何らかの咎めがあるわけではない。」とも説明された。

 八幡和郎氏が主張してきたことは、実務上の扱いに照らせば、全く筋違いだったことになるだろう。日台重籍の当事者に対し、「二重国籍」よばわりだの、「選択義務を果たせ」だのと迫ったりなどという、八幡和郎氏が唱えたような、理不尽な対応は、当の法務局は、もともとしてはいなかったということになる。

10月10日は「国慶節」か?

 このところ、台湾での10月10日を「国慶節」と表記している日本語記事を見かけ、違和感を感じています。
 台湾教育部の辞典サイト《重編國語辭典修訂本》
 http://dict.revised.moe.edu.tw/ でチェックしたところ
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【國慶日】民國前一年十月十日,國父所領導的革命黨人在武昌起義成功,推翻滿清政府,建立中華民國,後政府定每年此日為國慶日。
================
【雙十節】我國國慶日為十月十日,故稱為「雙十節」。
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の記載はありますけど、「國慶節」は収録語に無いのですね。(中国大陸では、10月1日を「国庆节(国慶節)」と言っていますが、それはあちらでの表現。)

 だから「國慶日」ないし「雙十節」を『國慶節』と言ったら台湾では失礼に当たると思い、自分はこれまで気を付けてきたほどです。

 ところが、台湾の国営通信社であるフォーカス台湾の日本語版では、

>「中華民国の建国記念日(10月10日)を祝う国慶節祝賀レセプション」
http://japan.cna.com.tw/search/201710060004.aspx

なんて表現をしているし、台湾外交部の広報媒体、TaiwanToday でも

>「外交部、国慶節のプロモーション動画公開」
jp.taiwantoday.tw/news.php…

という具合です。ちなみに台湾でも「雙十節國慶」とした表現はありますので、その日本語訳として「双十国慶節」と書くならまだいいんですが略して「国慶節」はどうかな。まあ、台湾政府の公式機関がそういう表現を使っちゃっているので仕方ないか。
(毎日新聞・校閲グループだったらどうするだろう・・。)

外国人旅行者等の消費税免税制度

・日本国民の場合、海外に転出して2年以上の者は、免税制度を利用できる。
・外国人は原則、免税制度を利用できるが、日本入国6か月以上になるものや日本の永住権を持っている人は利用できない。

・・・といった運用が免税店の現場でされています。

 私は日本の再入国許可を取った上で海外に転出し、そろそろ5年。日本籍だったらとっくに免税OKになるところです。日本に行った際、免税で買い物をしたいですが、「永住権あるからダメ」拒否されることが度々。

 ただ、自分で調べても「永住権を持っている人は利用できない」という基準に、「法的根拠」は見当たらない。

それで、徹底的にお役所とお話ししてみました。

1)関東運輸局 観光企画課(消費税免税制度の相談窓口)に聞いた
 担当)「自分たちは判断できないので、管轄税務署に聞いて」

2)新宿税務署に聞いた
 担当)「東京国税局消費税課が出している『事業者のための輸出物品販売場のしおり』に「永住者は居住者扱い」との記述がある」 
 私)その扱いに、法上の根拠はありますか?
 担当)知らないけどきっとあるはず。自分らはわからないから国税庁に聞いて。

3)国税庁消費税室に聞いた

 「永住者は居住者扱い」というのは簡易的な判断基準。簡易基準でなければ、現場で運用できない。
 あなたのケースは法的には「非居住者」だが、簡易基準で判断すると居住者扱いとなってしまう。実務上、仕方がない。ご了解ください。

 ただ、もし店側が納得して免税にしてくれればそれはそれでOK。法的問題はありません。

 とのこと。

 私から、「非居住者に該当するかどうかの判断は販売現場にはできません。簡易基準を使えば、本来受けられる権利が受けられなくなる人が出ます。何かしらの救済措置を希望します。例えば、役所で「非居住者」であることの証明書を出していただけるとありがたい」

と申し入れておきました。

日台重籍者に選択義務があるのか東京法務局の国籍相談に聞いてみた

 東京法務局の国籍相談窓口の担当の方に電話で聞いてみた。これって金田法務大臣の記者会見が勇み足だったってことなのじゃないだろうか?
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私)日本と台湾の重籍にあたる者の扱いについて去年から話題になっているが、詳しいことを知りたい。

担当)日本の方では台湾の事を国として認めているわけではない。台湾国籍と言うのは日本側の扱いではそもそも無い。日本国籍単一の国籍を持っているというふうに扱われる

私)そうなのか?去年10月18日の金田法務大臣の記者会見で台湾籍の人も二重国籍なので選択義務があると話していたが?それを聞いて、心配している人が周りにもいる。しかし選択の制度を調べてみると、台湾籍を選んで日本籍を抜けるということはできないということのようだが?

担当)そう。一般に二重国籍の人が日本の国籍を抜ける場合は国籍離脱届を出す。台湾の場合はそれをしても不受理になる。

私)そうすると状態としては変わらないわけか?

担当)そう。

私)金田法相は、政治家の蓮舫さんの関係で、一般論として「選択をしていないなら義務を果たしていないことになる」といっていた。この立場で義務違反と言われても困る。

担当)なるほど。ただ、事実上申請を出しようがない。出しても不受理になる。そういう意味ではそもそも台湾国籍だけを選択するというのはできない状態。なのでもちろん日本の方では単一国籍として見る

私)単一国籍として見るのか?心配なのは去年の金田法務大臣の会見で「一般論として」という言い方をしていたこと。政治家だから特別にあの人がという言い方なら納得できるが、金田法務大臣の話では「一般論として」台湾籍を持つ人も義務があり選択していないと違法だとおっしゃっていたことだ。

担当)台湾の国籍を選ぼうとしても、その手続きである日本籍離脱届は不受理になる。よって、そういった申請を出す必要はない。また、出さなかったからと言って何らかの咎めがあるわけではない。

 
2018年2月27日 録音(Youtubeへのリンク)を追加しました。

www.youtube.com

「箱」と「盒」

 頼まれものの菓子(八個入りで200元(約800円))を買いに菓子屋へ。メモを片手に商品を探していると、店員が「見せてみな」というので手渡す。

 すると店員の態度が急に変わった。ニコニコしながら、
「是非試食して」(一つ頂いた)
「お茶もあるから飲んで」(申し訳ないからと断った)
「折角だからもう一つ試食して」(申し訳ないからと断った)
と驚くほどの歓待ぶり。

店員「今用意しますからねぇ・・ではお会計を、4800元(約19000円)です。」
私「はぁ?一つですよ、一つ。200元でしょ?」

・・・店員が凍り付くのが分かった。

私のメモには「○○菓子 『一箱』」と。
こちら(台湾)ではそういう場合は「箱」ではなく「盒」の字を使うのですね。箱というと24「盒」入り段ボール「箱」のことらしい。

八個入りを買っただけで、二個も試食を勧めてくれるなんて、なんて太っ腹なお店なんだと思ったら、なるほどガッテン(笑)。

台湾の「大帰化」制度

 台湾で「特殊な功績」がある場合に帰化手続きで「原国籍を離脱しなくても」帰化が認められる制度は今年から始まり、シスター、神父、や医師など、既に多数の該当者が出ているそうだ。

jp.taiwantoday.tw

japan.cna.com.tw

jp.taiwantoday.tw


(同様の制度は、日本にも既にある。国籍法9条(大帰化)がこれに相当するが、日本の場合は実際に適用された事例がない。)

 

(導入時のニュース)

japan.cna.com.tw

 気になるのは、ニュースになるのが欧米豪出身者ばかりであること。日本との歴史的結びつきを考えれば、「日本人」こそ、一番多く対象者になっていそうなものだと思う。

 私が疑問なのは、
・本当に事例がないのか?
・実際には事例があるのに、該当者が公になることを嫌っているのか?
 と書くと「日本は、日本の側が二重国籍を認めていないから」できないだろ?というツッコミが来そう。だけれど、「台湾籍の取得」では、日本の国籍法11条
「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」を『適用していない』。

・「できる」立場でありながら「できない」と思い込んでいるのか?
・「既にやっている」けれども公にならないのか?

 該当者が機会喪失にならないように、公式情報が欲しいところです。

「日台重籍」・・無理筋の国籍選択義務

 蓮舫氏の騒動のあおりで、一般に、日本籍と台湾籍を併せ持つ人(以下日台重籍者)にも国籍法上の選択義務がある、という認識が広まった。
 「にも」と書いたのは、台湾は国ではないと扱われる以上、日台重籍は国籍法上の二重国籍にはならないとする説も一部にはあるからだ。*1

 だが、2016年10月に当時の金田法務大臣が記者会見で、一般に日台重籍者も選択義務を負うと受け取れる説明をした*2 ことで、「義務はある」として一応決着した形になっている。少なくとも一般には、そう思われている。

 

 国籍法の条文を眺めてみると、14条の「義務」は、13条の「権利」と対になっていることが分かる。

国籍法13条
『外国の国籍を有する日本国民』は△△することができる
外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる。
国籍法14条
『外国の国籍を有する日本国民』は○○しなければならない
外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が20歳に達する以前であるときは22歳に達するまでに、その時が20歳に達した後であるときはその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。

 蓮舫氏に関わる報道では、日台重籍者が『外国の国籍を有する日本国民』にあたることは当然という前提の下、14条の義務だけがクローズアップされていった。では13条の「権利」は日台重籍者については実際、どう扱われているのか?

 条文には「できる」とあっても実は「できない」。
 これは、ほかでもない八幡和郎氏の著書「蓮舫「二重国籍」のデタラメ」(p227)にて、法務省の見解が次のように紹介されている。*3

『ところが、日台二重国籍の人が台湾籍を選び日本国籍を離脱しようとするのは認めていないのである。その理由は、国籍法の条文が、「外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる(第十三条)」となっているように、「外国の国籍を有する」という条件のもと、台湾(中華民国)は日本が承認している国家ではないため、それが証明書を出すところの「国籍」は「外国の国籍」にあたらないからだという。』

 法務省は『台湾の「国籍」は「外国の国籍」に「あたらない」から「外国の国籍を有する日本国民」についての条文(13条)を適用しない』と説明してきたわけだ。

 日台重籍者について、13条では『外国の国籍を有する日本国民』には、「あたらない」といい、14条では「あたる」と扱っていることになる。この扱いの違いは説明されておらず、『二重基準』だとしか言えまい。

 筆者はこれを、「権利を認めず義務だけ課すのはけしからん」というような感情論で述べているのではない。日本籍の離脱を認めない一方で、国籍選択を義務とすれば、実際に次のような不都合が出る。

 日台重籍者のうち、特に台湾に居住する立場を考えてほしい。ここでは蓮舫氏のことは忘れて、例えば、福原愛さん、江宏傑さんご夫妻の間に生まれるお子さんが、台湾で育って、22歳になった、というケースを想像してほしい。
 台湾での国民としての権利を留保するため、台湾籍を残し、日本籍を離脱しようとすると「台湾籍は国籍ではないので選べない」「日本籍は離脱できない」と日本側からは説明される。かといって放っておけば、日台重籍のままで「選択義務を果たしていない」ことになる。この状況は全く道理に合わない。

 この矛盾を解消する方策は次の二つのいずれかだろう。
1.国籍法上では、一貫して台湾籍を『外国の国籍』と扱うことにする。14条の選択義務を課す一方、13条で台湾籍を選択して日本籍を離脱することを認める。

2.国籍法上では、一貫して台湾籍を『外国の国籍』と扱わないことにする。従来通り、13条で台湾籍を選択して日本籍を離脱することは認めないが、14条の選択義務は課さない。

 

 台湾籍の扱いは、しばしば、「歴史的経緯」や「一つの中国」問題などが持ち出され複雑になりがちだ。そうした背景理解も大切ではあるが、まずは、目の前の手続きの明らかな矛盾を解消してほしいと思う。

 

(補足)

 国籍法13条に関する法務省の説明に関しては、対比を際立たせるため、蓮舫氏を二重国籍と批判してきた八幡和郎氏の著書からあえて引用したが、この記述とほぼ同一の内容が、亜細亜大学非常勤講師の 多田恵氏の論考中*4に見いだせる。

 それぞれの発行日の点から、多田氏の論考が先行しており、オリジナルであることはあきらかで、八幡和郎氏は多田氏の著作を一部改変して利用しているものと思われる。このため、多田氏の文献も引用するとともに、比較結果を次に示す。

 

左:多田恵「二重国籍問題が導く日本版・台湾関係法」(2016年10月18日) http://www.ritouki.jp/index.php/info/20161019/
右:八幡和郎「蓮舫『二重国籍』のデタラメ」p227(2017年1月9日第一刷)
(テキスト比較ツール difff《デュフフ》ver.6.1使用)

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*1:八幡和郎「台湾は国でなく二重国籍もないという説の誤り」アゴラ 2016年09月03日
http://agora-web.jp/archives/2021214.html

*2:法務省 法務大臣閣議後記者会見の概要 平成28年10月18日(火)
「一般論として,台湾出身の重国籍者については,法律の定める期限までに日本国籍の選択の宣言をし,これは国籍法第14条第1項,従前の外国国籍の離脱に努めなければならない,これは国籍法第16条第1項ということになります。期限後にこれらの義務を履行したとしても,それまでの間は,これらの国籍法上の義務に違反していたことになります。」
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00823.html

*3:八幡和郎 「蓮舫「二重国籍」のデタラメ」(p227)(飛鳥新社 2017年1月9日第一刷)

*4:多田恵「二重国籍問題が導く日本版・台湾関係法」(2016年10月18日) http://www.ritouki.jp/index.php/info/20161019/